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警察学校日記

 1日で起きたことを複数日にまたがって、日記にしています。そのため、時間軸がずれています。

忘れ物の嵐

4/8(月) 敬礼は辛いよ

 警察礼式の練習を活かして、入学式へ向けた練習が始まった。警察礼式と変わらない内容にヘトヘトになる。
 しかし、入学式という多くの人たちの目に映ることになる式に向けて、きちんとやり遂げたいという思いは出てきた。

 「気を付けー」
 「敬礼」
 それから何十分経っただろうか…1列10人くらいで3列になっていた俺たちのクラス。
 斉藤教官が見回ってきた。
 近くの奴に対して、
 「敬礼の位置が下がってるぞ。こんなんも耐えられねーのかよ」

4/9(火) 白手が無い

 「なおれ」
 教練教官の指示でようやく敬礼が終わった。こういうことが一番辛い。しかもちょっとした位置のずれで怒られるんだから、面倒で仕方ない。

 「白手を付けろ」
 後ろポケットに入れていた白手を出してはめた。
 突然、隣のクラスの奴が手を挙げた。
 「すいません。白手を忘れてしまいました」
 「他に忘れた奴いるか?」
 教練の教官だが、俺らの担任である斉藤教官よりおとなしめだ。

 そんなことはどうでもよくなった。
 白手を忘れた奴が、我が3組に3人もいた!432期全員で見ると忘れた人は4人。うち3人が3組だった。

4/10(水) 忘れた理由

 「4人のうち3人が3組の人間とは驚きですね」
 教練教官は嫌味をぐちぐち言うタイプと感じた。普通は、「何で忘れたんだ」とか「どういうことだ?」と怒鳴るのが当たり前なのに、冷静に感情を表現してきやがった。
 「3組の右の君。何で忘れた?」
 「急いでいて忘れてしまいました」
 「左の君は?」
 「私も急いでいて忘れてしまいました」
 「君は?」
 「白手を入れたと勘違いして確認しなかったからです」

4/11(木) 斉藤教官の赤面

 「君たちが忘れてしまったのは、君たちの責任じゃない。服装チェックや着替えなどで忙しいんだから忘れてしまっても仕方ない。2組に1人いるが、他の教場の担任教官は素晴らしい教育をしてるんでしょうね。そう言えば、私は君たちと同じく入校した高卒の434期も教えているが、彼らは誰も忘れ物なんかしてなかったな。いやぁ、434期の教官の指導の賜物ですね~」

 長い長い嫌味たっぷりのトークが終わった。
 手紙の追伸のように教練教官が付け加える。
 「まぁ、でも1クラスに3人も忘れる人がいるのは、何年ぶりでしょう。指導にやりがいが出ますよ。3組の担任教官に感謝しなくてはね」

 斉藤教官は左ほほを少し上げながら、歯ぎしりをするような表情で下を向いていた。

4/12(金) 忘れ物の代償

 ある程度、授業を進めなければならないようなのか全員でのスクワットを100回行った後、連帯責任は終わった。そして、忘れ物をした奴らは最前列の更に前にある指揮台の前に立たされ、常に教練教官の目に入る位置で練習を行うはめになった。

 隣の教場からは、たびたび担任教官・助教が自分たちの学生を怒ったり、指示を出していたり、注意をしていた。
 唯一だった。斉藤教官は、ただただ、俺らの後ろで歩いているだけだった。
 担任助教である関根助教も、斉藤教官の雰囲気を察してか、何も言葉を発しなかった。
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