警察学校日記
1日で起きたことを複数日にまたがって、日記にしています。そのため、時間軸がずれています。
挫折感
5/22(月) ミスは連帯責任
さっそく教場全員でさがすことになった。
正直、きちんと探す人など多くない。彼らの問題ではないからだ。
むしろ、いい迷惑だと感じているし、それを言われることもあった。
なにせ、分刻みで動いているのに、余計な時間を取らせないでくれ、というのが実情だろう。
翌朝、関根助教に報告に行った。
「本当に全員で探してるのか?やらせろよ。お前の責任なんだからな」
初日は、みんな本気で探してくれたが、日が経つにつれ、探すのも探してるふりになっていった。
俺自身も感じている。
これだけ探したのだから、もうでてこないと。
それでも、探さなければいけない。自分一人だけで探すならどれだけ救われたことか。しかし、教場全員で探さなければいけない。彼らの貴重な時間を割いて。
警察に入って初めて、この組織が嫌になった。
居心地が悪い…教場全員が自分を責めているような…
組織に忠誠を誓おうと思っていた初日の思いは、早くも欠け始めていた。
5/23(火) 悪いときこそ気を付けろ
俺は、将来の自分のためにも、この日記に次のことを書き留めておこうと思う。
負は負を招き、奈落の底に突き落とす
夜に関根助教が寮へ見回りに来たのだ。
「藤原、お前は何で夜、報告に来ないんだ?」
は!?マジかよ?毎日報告って朝晩ってことかよ?そんなん報告する時間なんてねーよ。
「すいません。1日1回だけの報告と思っていました」
「誰が1日1回と決めたんだよ」
たしかにそうだが…
「勝手に決められるほど、お前は偉いんか?」
マジかよ?という隠していたオーラは伝わったのだろうか?
「どうせ面倒くせぇ、とか思ってんだろ?」
「分かった。お前だけには特別、優しく接してやるよ」
「いえ、全く必要ありません」
「だったらやることやれよ!」
5/24(水) 聞き取り調査
俺は自室就寝マークはドアから落ちたと仮定した。その他に起こり得る事象など想像できない。
そして、寮を清掃した仲間が吸盤らしきものを掃除したかもという情報を聞いた。
「それ捨てたんだな?」
「捨てたかもしれないし、捨ててないかもしれない。自室就寝マークなんて知らなかったし」
多分、そうなんだろう。
朝に落ちて、それを自室就寝マークとは知らずに、掃除して捨ててしまった。
5/25(木) 真相報告
俺は、事実の真相を教官に報告した。
「そんなわけねーだろ!探すのが面倒になったか?」
「もし捨てたっていうなら捨てた奴を連れてこいよ」
仲間を裏切るような行為に近い。
それでも、俺は仲間に教官室へ一緒に行くように説得していた。
俺一人の責任じゃない。事故の要素もあるんだと逃げるような思いだった。
5/26(金) 警察に向いてないかも
俺は自分の性格から、警察には向いてない可能性が高いと分かっていながら、警察に入った。
ただ、公務員になって偉くなれという親の希望通りに進んできた。
学歴はノンキャリア警察官としてはもったいない。
運動もほどほどできる。というか、クラスでは上位に入る。
事前に警察についてよく調べていたから警視にはいけるという自信があった。
警部補や巡査部長で終わるなら、警察なんて絶対に入らないとさえ思っていた。
なんでもかんでも職務上の命令は上司に従わなければならない。こんなわけ分からないやり方で、進めていくなんてナンセンスだ。俺はもっと合理的に考えたい。
そのことはずっと感じてきた違和感だった。
それにこんな大きな失敗をして、まわりにも迷惑をかけている自分が惨めに思える。仕事の出来ない奴の典型例じゃないか。俺は逆の立場を望んでいた。コイツ出来ないな~、なんとかフォローしてやらないと、とね。
もう下位は嫌なんだ。
この頃には、成績上位で卒業しそうな奴は予測が出来てきた。
副総代の小野誠司。
真面目で律儀そうな阿良神桔平。
二人とも俺と同じレベルの学歴である。相手に不足無し、やってやろうじゃないか!
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