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警察学校日記

 1日で起きたことを複数日にまたがって、日記にしています。そのため、時間軸がずれています。

退職勧奨3

7/5(月) 教官、担任を辞める!?

 学校長の大激怒の日の放課後、教官から教場に集合するよう指示が出た。

 「自分が寝たと思う奴、立て」

 ……
 沈黙が続く

 「誰も寝てねぇんだな?俺は後ろからよく見てたからな」
 ……
 更に沈黙が続く

 仮に自分が寝ていたとしても、最初に立つのは辛い。
 恰好の標的になるし、どんなことを言われるかも恐ろしい。
 教官は教壇にあった机を蹴り飛ばし叫んだ。

 「どういうことだよ! 自分のやったことも覚えてねぇのかよ!」
 教場の出口へ歩き出しながら一言残して去った。
 「俺はもうお前らの担任おりる」

7/6(火) 助教の説教

 教官が俺たちの教官としての仕事を放棄すると言い残したあと、助教は少しの間を取ってから話し始めた。

 「お前ら相当だぞ。俺が警察学校に来てから、教官が担任をおりることなんて1回も無かったからな。それだけ重大なことだぞ。全員、目を閉じろ。正直、ほんのわずかでも寝てしまったと思うやつは手を上げろ。おい、早く上げろ」

 俺はそう言われながら、若干、目を開けてどれくらい手を挙げているのか見ていた。
 すると、半分くらいの奴らが手を挙げていた。

 「もういいぞ。寝てた奴いるじゃねーか。何で手を上げないんだ。副総代、今すぐ教官のところに行って、戻ってきてもらうようお願いしに行け」
 副総代は快活な返事をしながら、走って教官室へ向かった。

 助教は話を続ける。
 「お前ら、教官から2回警告されても話が通じないみたいだな。そしたら、体で覚えるしかないぞ。いいんか?あぁ?ったくよ、やってくれるよなぁ。もう、体が慣れてきちゃったんか?ん?」

 4月の時の苦しい追込みには戻りたくない気持ちの一方、どうしようもなく、ただ説教を聞いているしか出来なかった。

7/7(水) 教官戻る

 副総代は十分な役割を果たして、教官と一緒に戻ってきた。

 「最後に言うぞ。寝た奴立て」

 ぞろぞろと半数近くが立った。

 「反省したかと思えば、未だに半数しか立たねぇのか」
 大きな怒号で続ける。
 「もっといただろぉぉ!」

 そして、俺ももしかしたら、そうなのかもしれないという表情をしながら更に3割程が立ち、合計教場の8割近くの同期が立っていた。

 「これだけだな?こういうときに最後に立つとものすごく評価悪いぞ」
 そんなこと言われても寝た記憶はない。が、よくよく考えるとあのとき10秒か20秒くらい記憶がなかった時間がある。でも、ほんのちょっとだし完全に寝た覚えもない。

 それでも俺は評価のことも気になってきて、今更ながら立った。

7/8(木) お前も寝てたよな?

 俺が立つと同時に、1割程が立っただろうか。同期の9割が立っていた。

 「藤原、お前寝てたよな?後ろから見てたぞ。何今頃立ってんだよ。なぁ?最初に立った奴らはまだいい。正直に自分のしたことを最初に言うのは認めよう。ただし、最後に立った奴ら、お前らみたいのが1番気にくわねぇんだよ。追い込まれなきゃ認めないっていうのは、犯罪者と一緒だぞ。なぁ、藤原」

 マジでキツイ…半信半疑だ。あれは、俺の中では寝たとは言えないと思う。自分でもいまだに確信がもてないのだ。あれが寝てたのか寝てないのか、俺は教官の忌み嫌うような目線に怯えながら、教官の指示で座った。

 「全員座れ。このペナルティについては助教に任せる。どうすれば寝ないのか考えろ」
 そうして、俺らは副総代を中心に寝ないためにはそうすればいいのかを、話し合うことになった。

7/9(金) 退職勧奨1時間前

 この話し合いで、俺は教官の堪忍袋の緒を切る発言をしてしまうことになった。

 話し合いは、お互いを起こし合う、積極的に発言する等をすることによって、寝てしまうことを防ごうという流れになった。そして、議論の終結点はお互い起こし合うに向かっていたのだが、俺は自分が怒られたことと他人を起こすことについて疑問があり発言した。

 「どこからが寝たになり、どこからが寝てないのかを決めないと、どのタイミングで起こせばいいのかわかりません」

 追加しよう。発言した理由のもう一つに、よく思われたい気持ちがあった。俺はこの議論で何も発言していなかったから、何か発言をしないといけないと考えがあり、終結点に向かっていた議論に焦りを感じていた。

 この発言を聞いた教官は激怒した。

 「そんなこと話し合ってるんじゃねーんだよ!もう止めだ。こんな奴がいたんじゃ、話し合いしても無駄だよ。てめー自分で寝といて、よくそんなことが言えんな?警察官がパトカーで寝てたと市民が思ったら、寝てたになるんだよ。現場ではグレーも黒になるんだよ。起こすタイミングもそいつが寝てたと思えば起こすでいいんだよ。そいつが寝てたと思ったんだから、他の奴だって寝てたと思うやつはいるんだよ」

 たしかにそうだと思いながら、とんでもない発言をしてしまったなと後悔してきた。
 教官は話し合いを中止させ、
 「もういいや、話し合い中止。無理無理、こんな奴がいるんじゃ」
 そして、最後の一言。
 「お前ちょっと後で、教官室来い」
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